Stories 02


0.1秒の世界に生きるアスリートが、
香りをまとう理由。

宮脇 花綸


Karin Miyawaki

フェンシング選手(パリ五輪メダリスト)

様々な世界でご活躍されている方のライフスタイルと香りのつながりをインタビュー形式で紐解きます。
Stories 02は、パリ五輪で団体メダルを獲得し、次なる舞台—オリンピック個人戦での金メダルを見据えるフェンシング選手・宮脇花綸さん。

「"勝ちたい"と"負けたくない"は別」

そう語る彼女は、0.1秒の判断が勝敗を分ける世界で、戦術と感情のコントロールを武器に結果を出し続けている。5歳上の姉の影響で5歳からフェンシングを始め、喜怒哀楽を全身で表現できるこの競技に魅了されてきた。
そんな彼女と香りのつながりを紐解きます。

姉の「剣道がしたい」から始まった出会い。小柄な5歳が見つけた、頭で勝つスポーツ

きっかけは5歳上の姉です。姉が小学1年生のときに「剣道をやりたい」と言ったのですが、実家の近くに小学1年生から通える剣道場がなくて。代わりに家から車で5分のところにあったのが、東京フェンシングスクールというフェンシングのスクールでした。姉が先に始めて、私は送り迎えについていくような形で見ていたんですが、小学校の受験が終わったタイミングで、今のスクールの師匠から「君もフェンシングを始めてもいいよ」と言ってくれて、小学校に入学する直前の5歳のときに始めました。

元々負けず嫌いだったので、個人スポーツのフェンシングは性格に合っていたんだと思います。子供の頃はレンジャーごっこみたいな「戦い」が好きでしたし(笑)。

フェンシングが継続できた理由は2つあると思います。

ひとつは、年上の男の子にも勝てるということ。私は小柄で、2月の早生まれだったので体格的には不利だったんですけど、フェンシングではそれが関係ないんです。スピードも必要な場面はありますが、やっぱり戦術や頭を使って勝てるというのがすごく面白い。3学年上の男の子に勝ったときの嬉しさは今でも覚えています。

もうひとつは、大人になってから気づいたことなのですが、喜怒哀楽をここまで爆発させられるのが私にとってのフェンシングだったのかなと。大人になると、声を上げて喜ぶとか、本当に泣くほど悔しいとか、すごく怒るとか、なかなかないじゃないですか。友達といてもそうだし、仕事をしていてもそこまで感情が高まることはない。でもフェンシングでは、嬉しいときはすごく嬉しいし、悲しいときはすごく悲しいという気持ちをストレートに出せる。それがこのスポーツの面白さだと思っています。

試合前の精神統一は、言葉と音楽

フェンシングは1日の間に1回戦から決勝戦まで何度も試合を重ねるトーナメント式の競技です。試合の合間が1時間、2時間と空くことがあるので、その間に一度外に出て、日を浴びながら自分自身と対話するようにしています。ひとりになって、自分自身に語りかけるような感じで。「こういう気持ちでいこう」とか、「負けて始まるかもしれないけど落ち着いていこう」とか。

あとはゲームの流れも考えますね。とにかく自分自身の気持ちを奮い立たせて勇気を持っていこうと思う場面もあれば、チャンスだと思って前に出ると逆にやられるリスクもあるので、そのバランスは常に意識しています。

「ジンクス」というもので自身のパフォーマンスを縛りたくはないんですが、試合前日は本を読んだり、後はマツケンサンバを聞きます(笑)。いろいろ試した結果、たどり着いたんです。ポジティブな気持ちになれるもの、楽しくなれるものを選んでいます。

試合当日は、朝に鏡を見て自分にひと言声をかけて試合会場に向かっています。

「休んでも、自分のフェンシングは消えない」—フランス人コーチが教えてくれたオフの価値

オフの日は東京の実家に帰ることが多いです。6歳の犬を飼っていて、犬と一緒に過ごす時間がとても穏やかでいいなと思っています。日差しを浴びながら散歩して、歩いたり走ったりするのが、一番心身ともにリラックスできているんじゃないかなと感じますね。

大きな影響を与えてくれたのは、フランス人コーチの存在です。彼は「休むときはちゃんと休め」というタイプで、休みの日に練習したら逆に怒るくらいの人でした(笑)。海外の選手を見ても、しっかり休んで復帰して優勝するということがある。「休んでも、今まで自分がやってきたことがなくなるわけじゃない。自分のフェンシングはちゃんと自分の中に残っているんだよ」と日頃から言ってくれていて。その言葉に安心できたのは、彼のおかげだなと思います。

それと、最近ハマっているのはゴルフです。去年の秋に始めて、家の近くのシミュレーションゴルフで毎週練習するくらい好きになりました。フェンシングはどうしても気軽に対戦できないスポーツなんですけど、ゴルフなら家族や友達と「週末行こうよ」ができるのがいいですね。あとはスポーツ全般的に見るのが好きで、特にカーリングは戦術が面白くて、やっぱり戦術好きなんだなと自分でも思います(笑)。

今後の目標—個人戦で金メダル。そしてその先に描くビジョン

まず近い目標としては、2年後のロサンゼルスオリンピックで個人戦の金メダルを獲ることです。パリオリンピックでメダルをいただきましたが、あのときは団体戦で、本当にチームメイトに取らせてもらったようなメダルでした。今度は個人の力をつけて、世界一に挑戦したいと思っています。

結果以外の面では、全日本選手権を満員の観客の前でやって、見に来てくださった方に「フェンシングって面白いな」と思って帰ってもらうこと。そのためには選手としての魅力や実力ももちろん必要ですし、フェンシングという競技自体のルールや魅力をもっと分かりやすく届けていきたいなと思っています。

「勝ちたい」と「負けたくない」は別物だと思っていて。よく「負けたくない」という感情になるんですけど、負けたくないなら試合に出なければいいし、そもそもフェンシングをやる必要もないわけです。本当は「勝ちたい」からフェンシングの練習を頑張って試合に来ている。でも頭の中で間違えて変換すると「負けたくない」になってしまって、リスクを取れなくなったり否定的な感情になってしまう。だから、試合が怖いなと思ったときには「いや、そうじゃないでしょう。勝ちたくて、試合に出るために練習してきたんだよね」と自分に言い聞かせるようにしています。このメンタルコントロールがここまでできるようになったのは、東京オリンピックの後ですね。コロナ禍に「何のためにスポーツをやるんだろう」と深く考えたことも大きかったと思います。

競技中や普段の生活の中で、香りはどのような存在ですか?

香りって、記憶や感情とすごくリンクしているものだなと思います。道を歩いていて夕飯のいい匂いがして心があたたかくなるとか、ある香りを嗅いだ瞬間に何かの記憶が思い起こされるとか。そういう存在ですね。

自分自身が香りを「コントロールする」という意味で一番活用しているのは、遠征先のホテルです。初めて泊まるホテルを自分のリラックスできる空間にするということに、一番香りを使っています。慣れない土地で、食事が合わないとか、いろいろ問題があるときもあるんですが、そんな中でどれだけ自分自身の場所にできるかがすごく大事だと思ってます。ベッドにシュッとひと吹きするだけで、いつものベッドと同じ匂いになれば、それだけリラックスできる可能性が高まるんです。

場所によっても使い分けています。部屋やリラックスしたいときはすっきりした感じや甘い感じに、玄関はもうちょっと爽やかな感じにしようかなとかの工夫もしてますね。

モルトンブラウンとの出会い—玄関のデリシャスルバーブ&ローズ

最初に出会ったのは「デリシャスルバーブ&ローズ」でした。今は玄関を入ってすぐ横にこのルバーブのルームフレグランスを置いています。帰宅してドアを開けた瞬間にルバーブの香りがする—「いい香りだな、帰ってきたんだな」という瞬間が、1日の中で一番香りの効果を感じる瞬間かもしれません。

あとは、自分で使うだけでなく、友人へのプレゼントにもモルトンブラウンを選びますね。身につける香りだと好みが分かれますが、ルームフレグランスは比較的万人受けしやすいですし、贈り物としてもちょうどいいんです。自分でも使うし、他の人にもあげられるしというので、すごく気に入っていますね。

1日を香りで切り替える習慣

1日を通して香りを使い分けています。

まず朝起きてご飯を食べて、午前中の練習に行きます。練習場がすぐ近くなので、お昼休みには帰ってきてお昼ご飯を食べるんですが、平日に食べるものが毎日決まっていて、お昼は鮭なんです。なのでどうしても手が生臭くなってしまうので(笑)、今は「ローズマリー」のハンドウォッシュとハンドローションを使っています。これで手を洗うとすっきりできます。

午後の練習に行く前には、いくつか持っている小さなサイズのバス&シャワージェルの中から「今日はこれかな」と選んで出かけます。いろんな種類を試せるのが楽しさのひとつですね。好みの香りはあるんですけど、「この匂い試してみよう」ということができるのがすごくいい。

午後の練習が夕方くらいに終わって、夕飯を食べて、寝るまでの間にやっとお風呂に入ります。お風呂は長めで30分かそれ以上。今は「ブルーベル&ワイルドストロベリー」のバス&シャワージェルを使っています。

そして寝る前に、フレグランスをシュッとして眠る—これが私の1日の締めくくりです。

宮脇さんのおすすめアイテム